些かくどいようだが、リクエストがあり、
また大切な論点なので、産経新聞が、
「皇室と国民の区別」について、
理解出来ていない実例を示しておこう。
6日1面の「女性宮家 疑念残る論点整理」という記事の中で、
こう述べている。
「もともと皇族は選挙・被選挙権を行使できず、
政治的活動や営利事業も認められていない。
戸籍は持たない一方で住民税は支払わなくてはならないなど、
初めから一般国民とは異なる例外的存在として扱われてきた。
そのような現状を容認しながら、
婚姻後のあり方については急に
『法の下の平等』を振りかざすことには違和感を覚える」と。
奇妙な文章だ。
分かった上で、トリックを使おうとしているのか。
それとも、本当に分かっていないのか。
私は「好意的」に後者と見なす。
そう見なすからこそ、
「皇室と国民の区別が理解出来ていない」と断定するのだ。
皇族が「一般国民とは異なる例外的存在として」扱われるのは、
まさに国民一般とは区別されるべき、
皇室という「聖域」内の方々だからだ。
何故このような「聖域」が認められるのかと言えば、
憲法に即して述べるなら、
憲法自体が国民統合の中軸として
世襲の「象徴」天皇制度を要請しているからだ。
こうした憲法上の要請が、
我が国の長い歴史を背景にしていることは、
改めて言うまでもあるまい。
ところが、「婚姻後」はどうか。
今の皇室典範の規定では、女性皇族の場合、
「聖域」たる皇室から出て、国民の仲間入りをされることになる。
戸籍に登録され、選挙権も被選挙権も行使出来るお立場になるのだ。
政治的活動や営利事業も、社会的には無論、
一定の自制が「期待」されるだろうが、
法的には何の制約もない。
ならば、憲法が国民について定める
「法の下の平等」の適用を受けるのは、当然だ。
だから、尊称だけの内親王案は「あっさり否定」されたのである。
女性皇族がご婚姻後、皇室を出て、
国民になったからと言って
「急に『法の下の平等』を振りかざすことには違和感を覚える」?
「急に」も何も、皇室の一員たる皇族から国民へと、
立場がはっきり変わられたのだから、
「法の下の平等」が適用されるのは当たり前のことだ。
もし、女性皇族にご婚姻後も特別の立場を
維持して頂くのであれば、典範を改正して、
皇室にとどまり、女性宮家を設けて頂くほかない。
女性宮家には反対しつつ、
国民になっても「法の下の平等」の適用を受けることに
「違和感を覚える」などというのは、
とても通用する議論ではない。
皇室と国民の区別が分かっていないと、
こんな暴論を平気で吐いてしまうことになる。
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